化学

環境計量士の試験対策 分析機器をざっくり説明! その⑧ ~ガスクロマトグラフィー~

こんにちは!

Thinkです(Twitterアカウント👉https://twitter.com/Think_blog_2019)

環境計量士の勉強をしたくても、なかなか時間が取れなくて勉強できていない方のために、機器分析についてザックリ解説します。

もちろんきっちりと原理から説明するのが一番ですが、すべて書くと辞典のような文字数になってしまうので「詳しい説明は省くが、こうゆう分析できる」といった形で記載しています。

今回はガスクロマトグラフィーの原理と種類について概要を説明します。

機器分析の参考書を購入した方は、参考書と一緒に読んでもらえればと思います。

なお、他の分析機器説明や問題の解き方などの情報はコチラの記事にリンクを掲載してありますので、ぜひご活用いただければと思います。

①ガスクロマトグラフィーとは?

コチラの記事でクロマトグラフィーとは混合物を分離する方法の一つであることと、分離する理由について解説しました。

クロマトグラフィーとは移動相に試料(混合物)を混ぜて固定相中を通過させることで分離する方法です。

液体クロマトグラフィーでは移動相が液体ですが、ガスクロマトグラフィーでは移動相にガス(気体)を使います。

ガスクロマトグラフィーの特徴は以下の通りです

  1. 試料は常温で気体又は加熱で気体となり熱に安定な物質を測定できます
  2. 移動相はキャリガスと呼ばれ、主に窒素、水素、ヘリウムを使います
  3. 固定相はカラムと呼ばれる筒に入れて保管し、そこに試料と移動相を流して分析します
  4. 固定相には個体を使うタイプと液体を使うタイプの2種類があります
  5. カラムの形状は充填カラム(パックドカラム)とキャピラリーカラムの2種類があります

②キャリアガスの種類と特徴

基本的に、分子量が小さくて不活性なガスが理想

  1. 窒素:安価で安全なガスだが、最適線速度が遅いため分析に時間がかかる
  2. 水素:安価で最適線速度域が広い。また、最適線速度が速いため移動相として理想的だが危険なため取り扱いに注意が必要
  3. ヘリウム:安全で最適線速度域が広い。また、最適線速度が速いが高価

注))線速度:気体がカラムの断面を通過する速度

ヘリウムが扱いやすいですが、生産量が少ないので他のガスよりも高額です。

そのため、ガスクロマトグラフの機能としてガスセーバーのようなガスの使用量をへらす仕組みが登載されていることもあります。

③カラムの固定相の種類

カラムの固定相が個体の場合と液体の場合があるので、呼び方が2種類あります。

なお、固定相が液体と言っても、水のようなものではなく、とてもドロドロしたもので、なかなか流れないような液体です(液体というか明確な融点が存在しないといったほうが正確かも)。

  1. 気-固クロマトグラフィー:試料と固定相(吸着剤)との吸着により分離する。吸着材にはシリカゲル、活性炭、アルミナ、合成ゼオライトなどが用いられる。希ガスや低級炭化水素の分離に使用される
  2. 気-液クロマトグラフィー:試料と固定相(液相)の分配により分離する。液相にはジメチルポリシロキサン、ポリエチレングリコールなどが用いられる。有機化合物全般の分離に使用される。

④カラムの種類

  1. 充填カラム(パックドカラム):ステンレスやガラスなどの内径2~4mmの管の中に粒子状の充填剤を詰めた物
  2. キャピラリーカラム:フューズドシリカやステンレスなどで内径1mm以下の管の内面に液相や充填剤を保持させた物。内径がパックドカラムよりも小さく固定相と試料の接触面積が小さいため、分離を良くするためにカラムがとても長い(数十メートル)

 

  パックドカラム キャピラリーカラム
内径(mm) 2〜4 最大で1
長さ(m) 1〜5 5〜100
膜圧(μm) 3〜10 0.1〜5.0
理論段数N 2000〜100000 7500〜300000
分離能N/m 2000〜2500 1500〜5000
材質 ガラス、ステンレスなど ヒューズドシリカ、ステンレスなど
不活性度 低い 高い
サンプル負荷量 10〜20 0.05〜3.0

 

⑤検出器の種類

検出器は以下のような物があります。

測定したい物質によって使い分けます。

 

検出器の種類 略称 測定対象
水素炎イオン化検出器 FID 有機化合物
熱伝導度検出器 TCD 無し(なんでも検出する)
電子捕獲型検出器 ECD ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子
光イオン化検出器 PID 分子のイオン電圧
フレーム光度型検出器 FPD 硫黄原子、リン原子
質量分析計 MS 分子の質量

 

⑥分析の流れ

液体クロマトグラフィーでは、移動相を2つ以上使用して分析を行うグラジエント法がありましたが、ガスクロマトグラフィーではカラム温度を変化させることで分離をコントロールすることもあります。

注入方法の種類

 

注入方法 注入時の温度 カラムサイズ 特徴 注意点
スプリット注入法 高温 すべて 一般分析、カラム温度条件に制限なし 低濃度成分には不向き
スプリットレス注入法/td> 高温 すべて 微量分析 気体や低沸点成分には不向き、カラム温度に制限あり
直接注入法 高温 内径0.53mm以上 一般分析 高分離が必要ない成分に適用
コールドオンカラム注入法 低温 すべて 熱に不安定な成分に有効、ディスクリミネーションが起きにくい 気体や低沸点成分には不向き、カラムが汚染されやすい、カラム温度に制限あり
温度プログラム気化法 低温 すべて 熱に不安定な成分に有効、ディスクリミネーションが起きにくい、大量導入が可能 気体や低沸点成分には不向き、カラム温度に制限あり。

 

⑦まとめ

今回はガスクロマトグラフィーについて説明しました。

液体クロマトグラフィーと同様に、検出器に質量分析計を使用する場合はGC/MSと呼び名が変わります。

キャピラリーカラムの種類や理論段数について調べておいたほうが、テストの時に役に立つかもしれません。

クロマトグラムの例や、データの処理方法は液体クロマトグラフィーの説明と同様の内容ため、割愛いたします。