こんにちは!
Thinkです。
これまで、環境計量士(濃度関係)(以下環境計量士と略す)の国家試験合格の体験談として、問題の解き方について記事を書いてきました。
試験まで2か月を切りましたが、既に問題集を何回も勉強されているかた、なかなか時間が取れなくて勉強できていないかた、さまざまな方がいらっしゃると思います。
今回は、なかなか時間が取れなくて勉強できていない方のために、機器分析について、ざっくり説明します。
もちろんきっちりと原理から説明するのが一番ですが、すべて書くと辞典のような文字数になってしまうので「詳しい説明は省くが、こうゆう分析できる」のようなざっくりとした感じに説明します。
今回はICPとICP/MSについて説明します。
①ICPとは?
高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)を熱源とする分析方法のことで、ICP発光分光法といいます。
ICP発光分光法を使用した分析機器をICP発光分光分析装置といいます。
ポイント
- 多元素同時分析
- 逐次分析が可能
- 検量線の直線範囲が広い
- 化学干渉、イオン化干渉が少ないため、高マトリックス試料(いろいろな物が混じっている状態)の分析が可能
- 高感度(大半の元素の検出下限10ppb以下)
- 測定可能元素が多い、原子吸光法で困難なジルコニア、タンタル、希土類、リン、ホウ素なども容易に分析できる
- 安定性が良い
-
空気-アセチレン炎が3000Kと比べて高い温度が出せるため、多くの元素を効率よく励起できる。
-
加熱に使うガスが不活性ガスのアルゴンガスなので、酸化物や窒素化合物が生成しにくい。
②原理
原子がエネルギーを多く持っている状態(励起状態)から、エネルギーを放出してエネルギーが少ない状態(基底状態)に変化するときに発光すること
を利用します。
このとき発生する光をスペクトル線といいます。
つまり高温度のプラズマの中に試料を入れて、その時に発生する光を分析するということです。
身近な物でいえば、花火の炎色反応のような物です。
スペクトル線の波長から、元素の種類を判定し、その光の強さから元素の含有量を求めます。
③加熱方法
加熱にはプラズマを使用します。
プラズマはアルゴンガスをトーチと呼ばれる管に流し、その先端部に設置しているワークコイルに高周波電流を流すことで発生させます。
高周波電流によりトーチ管内に生成される電磁場によってアルゴンガスが電離されプラズマを生成します。
このプラズマは高い電子密度と高温(10000K=9727℃)を持ち、このエネルギーにより試料を励起させて発光させる
試料は溶液にした物を使用して、霧状でトーチ管の中にある管からプラズマ内に導入する。
④ICP発光分光分析装置の種類
1.シーケンシャル型
- 回折格子を回転させ、波長をスキャンすることにより目的の元素の波長を取り込む
- 高い分解能が得られるため、金属をはじめとした多くの材料分析に広く普及
2.多元素同時分析型
回折格子とは?
分光器の分解能を決める重要な要素の一つ
簡単に言えば「光をどれだけ細かい波長に分けれるか」
回折格子に刻まれた線(刻線数)が多い物が波長分解能が高い
焦点距離75~100cmの分光器では、一般的に1800~2400本/mmの線が刻まれている回折格子を使用している。
もっと高分解能を得る場合は、3600本/mmやそれ以上の刻線数を使用する場合もあるが、その場合は400nm以上の長波長側の測定はできなくなる
ちなみに回折格子を肉眼で見ても、CDのような虹色に光る板にしか見えないです(光を波長毎に分けるため、虹色に見える)
⑤多元素同時分析型
1.エッシェルクロス型
分光部に特徴がある。
プリズムとエッシェル回折格子を組み合わせることにより測定可能な波長域の光を検出器上に二次元に分散させる分光器を用いる。
光の検出には半導体検出器を使用することで、任意の波長の多元素測定を行うことができる。
この装置は高速分析が可能で、数分で測定可能元素をすべて分析できる
2.パッシェン-ルンゲ型
凹面回折格子を用いて、プラズマから発生した光を分ける
凹面の曲率半径を直径とする円を仮定すると、回折された光は分散して入射側と反対側の円周上に焦点を結ぶため、この焦点上に検出器を配置することで測定する。
最も明るい1次光のみを測定対象とするため、感度が高い。
⑥ICP-MSについて
ICPに質量分析計(MS)を組み合わせた物
MS:Mass Spectrometer
ICPをイオン源に用いる。イオン化した元素を質量分析計で分析する。
- 高感度分析が可能(ppt~ppqオーダー)
- 多元素同時分析が可能
- 定性、定量が迅速にできる
- ダイナミックレンジが8ケタと広い
- 同位体比の測定が可能(同位体の化学的性質はほとんど一緒なので、スペクトル線だけではわからない)
- ICPのアルゴンと結合した分子イオンが測定対象物質の質量数と重なる場合、正しい分析結果が得られない可能性がある。そのため、プラズマの温度を下げて分析することがある。
⑦まとめ
今回はICPとICP/MSについてざっくり紹介しました。
金属元素の分析によく使用される物で、JIS系のテストに出やすい分析機器なので、押さえておいたほうが良いです。
今回の記事ではわざと書いていませんが「どの元素が測定可能なのか?」→「測定できない元素は、なぜ測定できないのか?」を覚えればなお良いです。
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